プロジェクト紹介:連続立体交差事業

千葉県・鎌ケ谷市と新京成電鉄が進める『鎌ケ谷都市計画都市高速鉄道第2号線新京成線(鎌ヶ谷大仏駅~くぬぎ山駅間)連続立体交差事業』において、2017年10月21日(金)の下り線(津田沼方面)高架化に続き、2019年11月30日(土)深夜に上り線(松戸方面)の高架への線路切替工事により全線が高架化されました。
線路切替工事に携わった関係部門の方々に工事を振り返りながら『新京成電鉄で働く魅力』に迫ります。

座談会参加者(所属・肩書きは取材当時)

酒井 朝盛
(鉄道事業本部鉄道施設部連立事業課長)
佐々木 啓友
(鉄道事業本部鉄道営業部お客さまサービス課長補佐)
横山 愛生
(鉄道事業本部鉄道営業部運行管理課事務員)

“いつもの毎日”を提供し続ける使命感――。
一人ひとりが自分の仕事に責任を持ち
「ONE TEAM(ワンチーム)」で事業を成し遂げる

Episode1. 連続立体交差事業とのかかわり

―連続立体交差事業では、それぞれどのような役割を担われたのですか?

酒井

この事業は道路整備の一環として施行する都市計画事業で、千葉県が事業主体となり、鎌ケ谷市・新京成電鉄が連携して進めています。
鉄道と道路の立体交差化により、踏切事故や交通渋滞の解消、および消防・救急活動の迅速化、地域間交流の促進等により、街の活性化を図るものです。
2002年の工事着手からおよそ17年、長い年月を多くの人が支え、迎えた全線高架化です。
本事業において、鉄道関連業務を当社が担います。私の所属する連立事業課は、この事業を完遂するための特命部門です。
行政協議や手続き、予算管理から工事運営まで多岐にわたります。大規模なプロジェクトですから、社内外の多くの関係者が携わっています。
信頼関係を礎に、共に前に進むことを意識しています。

佐々木

お客さまサービス課は、運転状況や時間帯、天候などよって刻々状況が変化する中、お客様が普段通りに駅をご利用いただけるよう”いつもの毎日”を提供できるかが求められています。
即ち、目の前の仕事を確実にこなすことだと考えています。

横山

運行管理課は、言葉通り列車の運行業務全般を担当する部門です。今回のプロジェクトにおいて、新しい路線に合ったダイヤを作成することも重要な仕事のひとつです。
高架橋工事は、線路直近で施工するため、列車が安全に通過できることが大前提です。
乗務員が安全に運転できるよう、工事部門との連携を重視しています。安全とは人がつくりあげるものだと考えます。

Episode2.線路切替の段取り

―線路切替に向けてどのように準備をすすめたのですか?

酒井

一言で表すと“心の準備です”。
・・・私は2年前の下り線切替工事でも、まとめ役を担当したのですが、当夜の作業が遅れ、自身の詰めの甘さに自己嫌悪に陥りました。幸いにも、始発列車を迎えることができましたが、今回の線路切替をどのように成功へ導くか。あれからずいぶん悩みました。
この事業は、計画・事業化・用地交渉・施工に至るまで、長い年月を多くの方々が繋いできました。“アンカー役として、最後の切替を成功させる”決意を固めたのが2019年元旦です。
切替準備におよそ1年、大きなプレッシャーもありましたが周囲が私の気持ちを支えてくれました。とても感謝しています。

佐々木

私も前回の線路切替を担当していたので、同じ気持ちで乗り切れました。
前回の線路切替工事の際は、線路切替口の作業が遅れている様子が無線機から聞こえ、刻一刻と迫る始発列車に向けて緊迫感が増していきましたよね。
無事に始発列車を迎えられたときには、「よかった~」の一言でした。

横山

下り線の線路切替工事のとき、私は入社1年目で、直前の10月1日に運行管理課に配属になったばかりでした。何も分からない状況でしたが、会社としての歴史的な瞬間に立ち会える喜びを感じました。
今回の上り線の線路切替工事では、鎌ヶ谷大仏駅からくぬぎ山駅までの区間において、上り線は最終列車より3本を運休し、代行輸送を実施することになりました。そのため、調整しなければならない段取りも多く、私としては、これまでの線路切替工事を勉強しつつも、新たな気持ちで一から準備しました。

佐々木

運行管理課は、線路切替工事以外にも、2019年末に導入された新造車両への対応など多くの業務も抱え、目まぐるしい年でしたよね。

酒井

春にお願いした運休や運転曲線(高架化による、新しい線形に応じた制限速度の変更や線路切替前中後の徐行運転に対するダイヤへの影響確認)、こちらも6月の新鎌ヶ谷高架駅供用や7月からは完成検査に向けた社内検査もはじまるタイミングでしたので、最短で検証してもらえて本当に助かりました。

横山

実はその時初めて運転曲線の作成を担当しました。必死でやりました(笑)。

佐々木

2019年は6月に新鎌ヶ谷駅の改札口開設や10月の消費税率改正もあったので、本当に忙しい一年でした。
2019年6月に開業した新鎌ヶ谷駅、当初は今回の線路切替と併せて供用する計画でした。新鎌ヶ谷高架駅開業を前倒しできたことにより、線路切替当夜の作業量の低減することができました。駅舎移転のノウハウは今回の線路切替工事に生かすことができました。

酒井

前回の線路切替では、結果的に施工計画の検証が不十分でしたので、今回は“シナリオをみんなでつくり上げる”ことを大切に取り組みました。
前回反省点に対する対策、作業手順の理解、作業の連携や関係者との連絡等、関係者の役割を明確にし、理解を促しました。
役割分担が決まると、関係者が自発的に段取り確認をはじめ、問題点や解決策をみつけてくれている姿がとても頼もしかったです。

Episode3. 迎えた最後の線路切替。合い言葉は・・・

―切替が近づくにつれ、社内の雰囲気はどうでしたか?

酒井

線路切替の段取りも終盤、連立事業課は11月の国の完成検査を迎える頃には、冗談交じりに“ONE TEAM(ワンチーム)”と言い合いながら、お互いが周囲を巻き込みながら仕事を進めていました。
本番2日前、関係者全員での最終確認では、その雰囲気が会社全体に広がっていきました。“成功させる”一人ひとりの気持ちが1つになった瞬間だと思っています。
線路の切替は“安全・確実・迅速”が求められます。そこをしっかり一人ひとりの社員が、関係者を含め、互いの信頼関係を醸成しながら、みんなでその日を迎えようという一体感が生まれました。

酒井

こうして迎えた当日、好天にも恵まれ、出来る準備は全て整えました。
日没前に現場を最終確認したのですが、赤富士を眺める上司の瞳が潤んでいました。
当夜の人員は社員116名と協力会社636名、最終列車を見届け最後の線路切替に着手しました。

―線路切替当日の役割を教えてください。

佐々木

私は新鎌ヶ谷駅を担当しました。他社線への乗り換え駅ということもあり、混乱が出ないよう何度も段取りを確認しました。
お客さまサービス課では、駅をご利用いただくお客さまのための、案内サイン看板や運行情報ディスプレイ、床に貼る誘導案内、監視カメラの設置と、万が一の際の代行輸送の準備を行いました。
初富駅と北初富駅が仮駅舎から高架駅舎への移転もあり、特に券売機や自動改札機の引っ越しが時間を必要とする作業でした。

横山

私は、切替本部と連絡をとりつつ、乗務員の移送管理と運輸司令の取り扱い確認を行っていました。また、新たなダイヤが適切に機能するかチェックを行いました。
私たちの仕事は安全にかかわるため、細かいところで誰がなにをするか、しているかの把握と調整が一番大切だと感じました。

佐々木

当日は自分たちの作業に集中することしかできません。今回は順調な様子が分かり、安心して自分たちの作業の確実な遂行に集中できました。
終車後の移動手段ひとつとっても、乗るべきタクシーに乗っているべき人が乗っていないといった、ちょっとしたほころびが事故のもとになる可能性があります。綿密な工程表が出ているにも関わらず現場では想定外のことが起きるので最後まで気は抜けませんでしたね。

酒井

私は、線路切替当夜を司る切替本部で無線連絡係を担当しました。
全ての作業進捗状況を現場配置社員から確認、作業完了の見込みを立てる役割です。
作業の連携、現場配置社員からの的確な進捗状況報告、思い通りに作業が進み、気持ちが高ぶりました。
こうして迎えた始発列車、関係者一人ひとりの目に優しく映っていました。

Episode4.未来のまちをつくる

―切替工事という仕事を終えて、得たものはなんですか。

横山

達成感と自分自身の成長です。当日、自分たちだけではなく、現場で働く人たちが「いつ」「どこで」「誰が」「なにを」「どのようにするか」のすべてを調整して伝えることは、正直なところ、大変な仕事でした。
しかし、前日まで詰めて詰めて調整した結果、切替終了後に現場の方から「当日の動きが分かりやすかった」と言ってもらえたんです。考えて考えて考えて、調整して調整して調整してということを繰り返した結果、自分に「調整力」がついたのではないかと感じています。

酒井

長い事業において、この切替の瞬間に携われるということは、大変ありがたいことです。
前回の足りなかった部分をみんなで振り返りながら、改善していった結果、無事に工事を終えることができました。できて当たり前なのですが、大きな達成感を得ることができました。
またいつの日か、線路を切り替える場面が訪れます。
この経験が次の世代に引き繋がれていくことを望んでいます。

佐々木

私は入社してから30年以上、駅員・車掌・運転士など現場で経験を積み、本社に配属されました。鉄道会社の仕事は、どうしてもお客さまと応対する運転士や車掌、駅係員が目立ちがちですが、列車を運行するためにこんなにたくさんの立場で働く人がいることを本社に来てから知りました。
反省点もありますが、自分一人ではできない仕事です。私は前回の切替工事にも携わっていたので、その大変さが身に染みて分かるだけに、「またやるのか」と逃げたくなることもありました。そのたびに酒井さんのところへ相談に行って・・・。
新京成の良いところは、相談事があるとき、課を超えてすぐに声を掛けられるところです。

横山

信頼関係は仕事をする上での大前提ですね。人とのコミュニケーションを大切に思える人が活躍できる職場じゃないかと思います。

酒井

私も苦手な部分なのですが、相手の気持ちに立つことが大切ですね。
組織力は会社にとってかけがえのない財産です。
この事業は仕上げの段階を迎えます。
高架下利用や道路や駅周辺整備など、千葉県や鎌ケ谷市と共に“付加価値”を高めていきたいと考えています。
沿線価値の向上と新京成の価値の創造、そのためには、自分の考えをきちんと持ち追求することが大切です。新京成は、コンパクトな会社なので、深く幅広く仕事に関わることができます。その一方で責任も大きいです。鉄道会社は公共性が高く、なおかつ民間企業の柔軟性があります。
困難も成長のチャンスと捉えられる人に、未来を託します。

―本日はありがとうございました。

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