プロジェクト紹介:連続立体交差事業

千葉県・鎌ケ谷市と新京成電鉄が進める『鎌ケ谷都市計画都市高速鉄道第2号線新京成線(鎌ヶ谷大仏駅~くぬぎ山駅間)連続立体交差事業』において、2017年10月21日(土)始発から北初富駅~新鎌ヶ谷駅~初富駅間の下り線津田沼方面が高架化されました。
線路切替工事に携わった各事業部の方々をお呼びして座談会を開催。
それぞれの立場からの感想や本音、今後のプロジェクトへの想いを語り合う話の中から、『新京成電鉄で働く魅力』を探りました。

座談会参加者(所属・肩書きは取材当時)

酒井 朝盛
(鉄道事業本部鉄道施設部連立事業課 課長補佐)
佐々木 啓友
(鉄道事業本部鉄道営業部お客さまサービス課 課長補佐)
谷川 直希
(鉄道事業本部鉄道営業部運行管理課 事務員)

40年来の地域の夢、実現の第一歩――。
『安全・安心・あたりまえ』を支え続けてきたものは
一人ひとりの責任感と使命感、そして仕事力。

Episode1. マニュアルなき線路切替ミッション

―事業名そのものの「連立事業課」ですが、10月20日終電後に行った高架線路への切替工事では、どのようなミッションを担い、いつ頃から準備を始めたのですか?

酒井

このプロジェクトは鉄道を高架化することにより、道路渋滞を解消し地域の活性化図ることを目的とした都市計画事業で、鉄道工事を当社が担当しております。
連立事業課では土木建築軌道工事を担当しておりますが、協議や手続き、予算や折衝など、事業を前進させるための礎となるセクションであると考えています。
大規模なプロジェクトですから、社内外の多岐にわたる関係者との調整が必要です。
関係者がそれぞれの立場で、責任を持って業務を遂行しなければプロジェクトは前進しません。

今回の高架線路切替は、これまでの仮線切替の経験を生かしながら、線路を高架化するために必要なことを半年程前から一つ一つ積み上げたものです。
保線・電気・土木建築・駅務・運行・車両部門等、関係者とつくりあげた一晩の為のシナリオ、『翌朝の営業列車を無事走らせること!』これが私たちの使命でした。

佐々木

電車を利用するお客さまにとって鉄道は、ルールやマニュアルに沿って、毎日“変わらないこと”を繰り返している業種と思われるかも知れませんが、実は、刻一刻と変わる状況に対して、どれだけ“変わらないこと”を提供できるかを求められる業種といえます。

谷川

今回のミッションについても、決まったマニュアルがあって、そのマニュアル通りに・・・なんてイメージをされるかも知れませんが、現在のダイヤや各線の乗り入れ状況、他の鉄道事業者との連携など、以前と同じ状況は何一つないので、過去に実施した切替え工事の記録や先輩の経験なども参考にしながら、一から計画を組み立てました。

当夜の工事計画は、経験と想像力の融合がカギ

―具体的に何から始めたのですか?

酒井

真っ先に、最も重要な高架区間両端の切替口での作業について段取りを行いました。
簡単に言うと、現存のレールを切断して、作り上げた高架に敷設したレールに繋げる。この作業にどれだけの時間が必要か、施工計画や想定されるリスクとその対処法は?、と担当者や請負業者と何度も議論を重ねました。
始発列車の前には、試運転列車を走らせ安全を確認しなければなりません。
限られた時間内で作業を完了できるよう、手順を何度も頭に思い浮かべる日々でした。
また、線路切替に先立ち、国の完成検査があるのですが、その準備にも追われ、体がいくつあっても足りませんでしたね。

谷川

運行管理課は、その名の通り、列車の運行全般の管理を行うセクションになります。
今回の高架化に伴い、新しい線形に応じた制限速度の変更や工事前後の徐行運転が発生するため、酒井さんから提示された工事サイドの希望を元に、どの速度でどう走れば安全か?それによってダイヤ変更は発生するのか?運転士が操縦に困らないか?といったダイヤの引き直しのほか、時刻表の変更や、列車の走行を監視する運行システム、信号関係のデータ変更などの準備を進めました。

佐々木

私たちお客さまサービス課は、お客さまが高架ホームにて列車を利用するために、駅係員への説明や案内設備などの準備を進めました。
特に新鎌ヶ谷駅では、北総線との乗換駅でもあるので、案内サイン看板やディスプレイ、地面に貼られる誘導案内、監視カメラの設置、など、当夜の作業計画について数々の調整を北総鉄道の担当者と行いました。
また、万一切替工事が遅れ、始発列車が運休する場合の代行輸送の準備も行いました。
過去の始発の乗車人数データからタクシーを何時迄に何処に何台準備すればよいか?
あらゆる可能性を想定しましたね。

酒井
このほか、本日はこの座談会に出席しておりませんが、信号機や電車線を切替える電気課、試運転列車や営業列車を車両基地から出庫させる車両課、当夜作業を現場で指揮する保線課や土木建築課とその現業部門との連携も欠かせません。
当日大雨の中、現場をみんなで確認したり、深夜まで測定や書類整理に付き合わせたり、文句も言わずにみんなが協力してくれた経験は、私の大切な財産です。

Episode2.『時間通り始発が動く』その一点を目指して

―切替え当夜の様子はいかがでしたか?

佐々木

当夜は全てが分刻みでしたよね。

酒井

終列車から翌朝の始発列車までの間に、予定していたすべての作業と試運転列車による安全確認を終えなければなりません。
22時にくぬぎ山本社に工事を指揮する「切替本部」を立上げ、各現場の担当社員や役職員全員が集まり、心一つにいざ出陣。最終列車を確認し、線路切替作業を開始しました。

私は切替本部で、各現場社員との工事進捗確認や指揮伝達を担当しました。現場の工事状況を常に把握し、状況を冷静に見極めなければなりません。
実は、松戸方の線路切替口の作業が遅れ、先手先手で今何をすべきかをずっと考えながら受話器を握っていました。

佐々木

私は新鎌ヶ谷駅で案内用のポスターやサインを設置する作業を行っていました。初富駅と北初富駅の作業は別の課員が担当していました。
持っていた無線機からは、松戸方線路切替口の作業が遅れている状況が聞こえ、刻一刻と迫る始発列車に向けて、緊迫した声が聞こえていたのを鮮明に記憶しています。
私は、万一に備えて、代行輸送のタクシーの手配も担当していましたので、手に汗握りました。

それぞれの役割を「必ず遂行してくれる」という信頼関係

佐々木

事前準備や計画段階では、課を超えてお互いが現場に足を運んで確認し合うことができますが、当夜は自分の持ち場に専念することになるので、自分以外の作業に対して、できることはありません。
「あの担当者が必ず作業を完了してくれる。だから自分達はそれを引継ぎ、スムーズに次につなげるんだ!」という信頼感を全員が持ちながらミッションに臨んでいる一体感を感じましたね。

谷川

我々運転部門は、現場の切替作業の状況を注視しながら、作業完了後に担う役割が大きいため、予定より遅れている報告が入る度にやきもきしながらも、用意した数パターンの運行ダイヤを目の前に、自分達が今できる事を考え、あらゆる対応に備え、待機していました。
始発列車の前に、試運転列車を走らせるのですが、その判断を待っているときは本当に緊張しましたね。

酒井

始発列車をあきらめて運休させるべきか?寸前の状況で現場の作業が完了し、「現場作業終了!試運転!」と言った瞬間に、試運転が直ぐに出発できる状況を整えていてくれていた。あのときは言葉にならないくらいありがたかったよ。高架を走る列車に乗った時の喜びは、忘れられません。

―最終的にどのぐらいの人たちが当夜のミッションに関わっていたのですか?

酒井

当夜の作業人員は社員103名と工事業者529名が加わり、延べ632人が携わりました。軌框移設および軌道整備、電車線調整、信号回路接続、駅旅客動線変更など、計画通りにいかないこともありましたが、ミッションに携わった皆が自分の役割を理解し、次に何をしなければいけないか考えながら動いてくれたおかげで、何とか始発列車を走らせることができました。

谷川

本当に、当日はいろいろありましたよね・・・。それでも始発列車を走らせることができた時は嬉しかったですね。

佐々木

日頃から鉄道会社に求められているのは「列車を定時に運行して、お客さまを安全に送り届ける」こと。その使命を皆が自負しているからこそ、皆が同じ方を向いて達成できたのだと思います。

Episode3. 皆で進もう、千里の道も一歩から

佐々木

私は入社してから30年以上、駅員・車掌・運転士など現場で経験を積んできて、本社に配属された経歴を持っています。
鉄道会社の仕事というと、どうしてもお客さまと第一線で応対する運転士や車掌、駅係員が目立ち、なにか花形のように思われますが、列車を運行するために、こんなにたくさんの立場の人が陰で支えているというのは、本社に来てから知りましたね。

酒井

線路切替え工事も、実際にはその一晩だけじゃないんです。
この日を迎えるために、連続立体交差事業を計画し立ち上げ、用地を確保し、仮線に切替え、構造物を造り上げる。社内外の数えきれない方々の努力と情熱によって、実現した高架化なのです。入社して、目的すらよく分からずにやっていた仕事が、実は当夜に繋がっている――。鉄道会社はそういう仕事が多いですから、若い人こそ積極的に挑戦してほしいですね。

谷川

私は、平成26年に入社して、経理業務を担当しておりましたが、今年度の人事異動により運行管理課に異動して早々に、このミッションの担当になりました。いきなり「運転曲線書け」なんて、驚きましたが、若くても大きな仕事を任せてもらえるので、とてもやりがいを感じました。

酒井

鉄道会社は公共性が高く、なおかつ民間企業の柔軟性がある。
当社は、比較的短い路線ですが、代替交通手段が少ないからこそ、地域との繋がりも強く、これからもいろいろな仕事ができる会社だと思います。
きっとそこには、正解は一つではなく、創造力が求められる仕事がたくさんあることでしょう。私も入社して、このプロジェクトに関わると思ってもいませんでした。
次の上り線高架化に向けて、やるべき事が山ほどあります。困難もあると思います。
無駄な経験など一つもありません。厳しい状況だからこそ、自分が成長するチャンスと捉えられれば、これほどやりがいのある職場はないですね。

プロジェクトは次のステップへ

佐々木

上り線の高架化に向けた工事もすでに始まっていますよね。
高架駅舎の開業もあり、お客さまサービス課に求められる責任や役割はより大きくなると思います。

酒井

もちろん、上り線高架化も見届けたいですね。
今回のミッションで培ったノウハウは、次回の上り線高架化だけでなく、会社の財産として受け継がなければなりません。
上り線が二年後に高架化されると、踏切がなくなり、高架下利用や駅前整備など、街の姿もずいぶん変わります。当社にとっても事業拡大のチャンスです。
鎌ケ谷市が連立立体交差事業を検討してから40年近く、鉄道結節点として、新鎌ヶ谷駅を中心とした街づくりは、地域行政の悲願であり、数えきない方々の努力と情熱が結集されたプロジェクトです。
プロジェクトを、責任をもってやり遂げ、お客さまや沿線地域の方々に、貢献したいですね。

―本日はありがとうございました。

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